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日々徒然なるままに駄目っぷりと愚痴と愛しさの垂れ流し。 呟き手はkt-blue。なんかの病気。躁鬱腐女子らしいよ。咲かない桜に憧れをこめて。


by ktblue-black
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そういえばこんなのもあるんだったわー

とりあえず出しといて自分を追い込んでおこうかな。
あとできっと日時タイトルを捏造するに違いない。






大きな、大きな大きな銀杏の下で、午睡む。やっと色づいた黄金の雨。
逃れることなど叶いはしないと解っている。けれど遠く、遠く、さらに遠くへはしって行かなくてはならない、筈なのにひどく眠い。土から伸びるなまあたたかなねむりの手が、足を掴み、腕を捕らえ、この大樹の足下へと日吉を導いた。
社を抜けて、走った。繁みを、森を、この山を。木の根につまづいたりもしたかもしれない。頬を伝う何かがあったかもしれない。何も覚えず風をきり続けた間、脳裏にちらつくのはあでやかなる新参の         
ああ、目蓋さえ重い。

武術の稽古の合間、手遊びに奏でた笛の音が、一匹のけものをよんだ。
人を喰らいに下りてきたか。が、警戒した気配を悟ってか、一定の矩を越えることのないまま、じっとこちらを見つめている。瞳の遣る先、辿れば掌中の笛。
「吹け、と」
人語を解すのか、ハタリと一度、尾を揺らめかす。
身を脅かすものではない。ならば何も気にすることなどはない。途切れた笛の音をもう一度結ぶべく、ひゅうと胸に腹に空気を満たした。

それからというもの、幾日かに一度はけもののために音を編んだ。
何度かすればあおいけものは慣れたもの。奏でる日吉の傍らで、眼を閉じて丸くなる。
鼻面を擦り付け気持ちよさそうなその様。
ふつり、細い響きを止める。
仰げば高く蒼から降り敷くよな黄金。しろがねの名を冠した扇が舞って、木々の間を駆ける風が森を奏でる。
ひとは、ちいさい。
しみ込んでくる地の息に呑まれ、る、瞬間。
ハタリ。
目を閉じたままのけものが尾をたたく。
この山に住まうものであろうに、木々の鳴るよりひとの子のかなでるささやきを望むのか。
引き戻されてそのまま、けれどこのおおきなおとに笛の音を乗せるなどもうできる気もしない。

( … つ  めの こ  と ばは か ぜ …

ああ、かかさまのうたっていた歌が聞こえる。随分昔に失くしたはずのうた。

( … か  み  さ まのう  で のなかへ つ  ばさを あおる よ … 』

傍らのけものの背を撫ぜる。やわらかく、暖かい。
これと出逢ってじきに六月程になる。三日の後には祭り。
その祭りで、日吉は舞を奉納する、はず、だった。














ぽいっとぶんなげて放置!ちなみにパラレル。
by ktblue-black | 2006-12-09 01:40 | 妄想化生SS