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日々徒然なるままに駄目っぷりと愚痴と愛しさの垂れ流し。 呟き手はkt-blue。なんかの病気。躁鬱腐女子らしいよ。咲かない桜に憧れをこめて。


by ktblue-black
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ファースト・ストレート・フラッシュ

珍しくたっぷり紅茶が飲みたいなあ、などと思い立つ。電気ポットの湯量は十分、飲むのは自分ひとりだから多少乱暴な沸かし方でも構わなかろうと、ティーポットではなく硝子のティーサーバーを棚から取り出す。
こんな気分は久々なものだから、茶葉をしまったストッカーの中身もすこんと頭から抜けていて、まるで初めての店で品定めをはじめる前のような心持ちだった。
「…あれ」
クリップで留めたアルミの袋、とりどりの四角い茶缶。湿気を吸わないように保管されているそれらをひとつづつ開けて香りを確かめていく。
「あー…しまったなあ…」
再度口を開けたそれらから香るのは、花、果実、夢みたいに甘くしたものばかりで、きゅっとした渋みのある茶葉独特の香りをさせるものがひとつもない。
「アッサム」と書かれた緑の缶をあけてみるも、立ち上るのはハーブとドライフルーツの熟れたような夏の香りだ。空き缶に別の茶葉を詰めたことすら記憶に遠い。
生憎と今身体が欲しがっているのはシンプルな、普通の紅茶なのだった。
かつては折りにふれて交わされる品々の中に綺麗な茶缶の一つ二つあったものだ。それらはたいていシンプルな種類の上質な茶葉がつまっていて、その品の良い香りと程よい渋みでくつろぎの時間を彩ってくれた。近頃はそうした贈答品のやりとりも滅多にない。
キッチンのキャビネットをごそごそやると、なにか垂らしたのだろう、端に薄く染みのできた箱を見つけた。箱の表には気に入りの紅茶店の名が箔押しでプリントされている。
わくわくしながら開けてみる、と。
「…わー…」
仲良く二つ並んで収まっている茶缶には、フレーバードでない茶葉の種類が記されているのだが。「ヴィンテージ・ダージリンにセイロンスペシャルブレンド…」
普段使いに飲むにはちょっと気がひける。きっととっておきにしようとしまい込んで忘れていたのだろう。
ちょっとだけ迷って、蓋をした。
使えるような茶葉がない。
眠気覚ましに買い込んだ徳用ティーパックで妥協するという選択肢も無いではないが、適当に煎れるにせよやっぱり
by ktblue-black | 2010-03-07 20:04